日影規制は何のため?対象の建物は決まっているの?

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建築物を建てる際には、建ぺい率や斜線制限などのさまざまな制限が課せられるものですが、そのうちの1つに日影規制というものがあります。それでは、日影規制とはどのような規制で、どういった建物に適用されるものなのでしょうか。
今回は、建築物にかかる制限の中でも、日影規制に焦点を当てて解説していきます。
いざマイホームを建てるときにつまずかないためにも、今のうちに日影規制についての詳しい知識を身に付けておきましょう。

 

日影規制が生まれた背景

日影規制とは、1976年の建築基準法改正で導入された規制です。70年代に入って高いマンションが建つようになったことに伴い、日照権に関する訴訟が頻繁に行われるようになったことから、建築基準法の第56条2項に設けられました。
マンションなどが少なかった60年代以前にはまだ意識されていなかった日当たりの問題が表面化してきたことで、法律によって正式に建築物にも規制がかけられるようになったというわけです。
日本と同じように土地の狭いイギリスでも日照権に関する法整備は進んでおり、20年以上採光のために用いられてきた窓の日当たりを妨げるような建築は一切認められていません。
反対に、アメリカの裁判所ではいまだに日照権を広く認めるような判決はなされていません。

 

日影規制は建物の高さ制限のひとつ

CASE599 日向ぼっこしたくなる階段のある家

日影規制は建築基準法で規制される建物の高さ制限の1つです。周辺の住人の日照権を確保するために、新たに建てられる建物の高さや形態を制限し、日陰となる時間を一定の時間内に抑えるということです。
ただし、日影規制はすべての建物が対象となるわけではなく、地域や建物の形状によって条件があります。また、日影規制は日照時間が1年で1番短い冬至の日の日当たりが基準になっています。
冬至の日の太陽が真南にきた時間を12時として、午前8時から午後4時までの間に建物がどのように影を落とすかを検討して規制をかけるかどうかを決定します。北海道の場合は午前9時から午後3時までの間で調査を行います。

日影の測定の際には、地面にどれだけの影を落とすかではなく、定められた一定の高さにおいて測定を行います。これは、隣の建物の日当たりにおよぼす影響が焦点となるので、隣の建物の1階や2階の窓の高さを基準として想定しているためです。
基準となる高さは用途地域の指定があるかどうかなどによって異なり、平均の地盤面から1.5mか4m、あるいは6.5mのいずれかとなります。
測定される範囲は2つあり、敷地境界線から5~10mの範囲で隣の建物の日当たりにおよぼす影響と、10mを超える範囲でおよぼす影響が検討されます。

 

日影規制の読み方は?

CASE599 日向ぼっこしたくなる階段のある家

日影規制の条件は、「5-3h/4m」あるいは「5時間・3時間・4m」というような書き方で表記されています。これがどういう意味なのかを説明していきます。
まず、「5-3h」という時間は日影がかかってもよい「時間の限界」の長さを表しています。日照時間がもっとも短い冬至の日の午前8時から午後4時の間に、敷地境界線から5~10m離れた範囲では5時間以内、10mを超えるところでは3時間以内であれば日影になってもよいという意味になります。

また、「4m」というのは「地面からの高さが4mのところで計測した」ということを表しています。4mの高さで計測しているのは、2階の窓の高さを基準にしているためです。
敷地境界線から5m以上の範囲の日当たりを測定していることから、日影規制では境界線から5m以内の場所の日影は考慮されていないということがわかります。
このように、日影規制は「日影の許容時間5-3h/測定面の高さ4m」というように表記されます。

 

用途地域によって異なる基準

日影規制において、日影を計測する高さや日影が許容される時間は用途地域によって異なります。
用途地域とは、効率的な市民活動を図るために種類の似通った建物を集めるように定められた地域のことで、住宅地や商業地、工業地といったように区分けされています。
このうち、商業地と工業地については日影規制が適用されないので、問題となるのは住宅地となります。
住宅用にあてられた用途地域には、第一種、および第二種低層住居専用地域や第一種、および第二種中高層住居専用地域などがあり、それぞれに日影規制の条件が建築基準法で定められています。

規制のかかる建物の条件もまた異なります。具体的には、第一種、および第二種低層住居専用地域と用途地域の指定がない地域の場合、「軒の高さ7mを超える建物、または地階を除く階数が3階建ての建物」が日影規制を受けることになります。
それ以外の地域では「軒の高さ10mを超える建物」が規制を受けるように定められています。
また、測定面の高さについても用途地域によって指定されています。第一種、および第二種低層住居専用地域では平均地盤面より1.5m、その他の地域では平均地盤面より4m、または6.5mの高さで測定されます。
用途地域の指定がない地域では、平均地盤面より1.5mか4mのどちらかを地方自治体が条例で定めることになります。

 

自治体によっても異なる日影規制

日影規制の条件は用途地域の指定のみによって決まるわけではありません。全国一律の基準ではなく、それぞれの地方自治体が建築基準法の内容に照らし合わせて基準を決めています。
測定面の高さについては用途地域の指定がない地域以外は定まっていますが、日影時間については3つの種別からそれぞれの地方自治体が選んで定めることになります。
たとえば、第一種、および第二種低層住居専用地域の日影時間については、「3-2h」「4-2.5h」「5-3h」の3つの種別がありますが、どれが適用されているかは地方自治体によって異なるということです。

また、建物やその日影が規制の異なる区域にまたがる場合にも注意が必要です。建物が異なる規制区域にまたがっていた場合、どちらか一方に日影規制が設けられていれば規制は建物全体に適用されます。
また、建物の日影が異なる規制区域にまたがるような場合には、どちらの日影規制もクリアするように建物を設計しなければなりません。
ですから、たとえ建物が規制のない区域に建っていたとしても、日影が規制のある区域にかかっている場合はその区域の規制をクリアしなければならないのです。

 

土地探しの際には要確認

日影規制は7m以上、または3階建て以上の中高層の建物にかかる規制ですが、住宅用の土地を探す際にも十分に注意しておく必要があります。
自分の家が日影規制の対象になるかということだけではなく、周囲に高い建物などがあった場合は日影に入ってしまう可能性があるからです。
これから家を建てようとしている地域がどういう日影規制を設けているのかを知っておくことで、日当たりに関するトラブルを未然に防ぐことができるのです。
日影規制に関しては、各地方公共団体の都市計画課で調べることができます。一生の買い物でいやな思いをしないためにも、事前のリサーチはしっかりと行っておきましょう。

 

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