住宅に気密性は必要?気密性の高い家のメリットとデメリットとは

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憧れのマイホームを購入する場合、デザインや間取りにこだわって選ぶ人も多いでしょう。

しかし、その住宅の中で「快適に過ごせるか」という点も重要なポイントなのです。気候の厳しい季節でも快適な日々を過ごすためには、断熱性能だけでなく「どれだけ隙間がない家か」を表す「気密性」にも配慮することが欠かせません。

そこで、今回は気密性の基本的な知識をはじめとして、気密性が高い家のメリットやデメリットについて解説していきます。

住宅の気密化とは?

CASE366 重ねる家

「住宅の気密化」という言葉を聞いたことはありませんか?住宅の気密化とは、簡単にいえば住宅の隙間を減らして密閉性を高めることを意味します。具体的には、寸法誤差の少ない高品質な建材を使用し、建材の接合部分を気密シートや気密テープなどでしっかりと防いで施工することで、こうして建てられた住宅は高気密住宅と呼ばれています。

気密性を高めるには、一般的な住宅よりも多い専用部材や、隙間を丁寧に埋める高い施工技術が必要です。このため、コストが高くなったり施工期間が長引いたりするケースも多いですが、それを補うだけの魅力が十分にあるといえるでしょう。

日本で古くから建てられている木造住宅の場合、住宅全体ではがき10枚分の隙間が存在するといわれています。はがき10枚分ともなるとかなりの大きさで、住宅のあちこちから風やホコリなどが侵入していたことでしょう。

これに対し、近代的な住宅はアルミサッシの普及や施工技術の進歩などにより、隙間はずっと少なくなっています。特に寒さが厳しい地域などは隙間が多いと快適性が失われるため、はがき2枚分以下の隙間で建てられている住宅もあるほどです。

ただし、近代的な住宅ならすべて高気密住宅というわけではありません。新しい住宅でも、施工方法などによっては隙間が多く残っているケースも十分にあります。このため、気密化を希望する場合は注文住宅を選んで自分好みに設計してもらったほうが確実です。事前に資料などを取り寄せたり問い合わせをしたりして、入念に確認しておきましょう。

住宅の気密性が必要な理由とは

CASE583 デルタ

住宅の気密性が必要な理由を一言でまとめると「長持ちして、かつ、快適に暮らせる家を作るため」です。この理由と住宅の気密性がどう関係するのかについて、詳しく解説します。

省エネルギーで室内の温度を快適に保つ

 気密性が低いと外気が室内に侵入しやすくなり、夏は暑く、冬は寒い家になってしまいます。冷暖房を使っていても十分な効果が得られず、電気料金までかさんでしまうでしょう。

この点、高気密住宅であれば室内の空気が漏れにくく外気も侵入しにくいため、省エネルギーで快適な住環境を維持することができるのです。

断熱性能の低下を防ぐ

断熱材はあくまでも室内と屋外の気温差を維持するためのものであり、風を防ぐためのものではありません。

グラスウールのような断熱材は線状をしているため、隙間があれば風を簡単に通してしまいます。これでは、せっかくの断熱性能を活かすことができません。気密性を高めると風そのものをシャットアウトできるため、断熱材が本来の性能を発揮できるようになります。

壁の中がびしょ濡れになるのを防ぐ

冬場は室内と外気の気温差が大きくなるため、室内の湿気が結露しやすくなります。

住宅に隙間が多いと室内の湿気が壁の中などに流れ出て、壁の内側で結露してしまうケースもあるのです。壁の中は普段目に見えないため、放置し続けた結露によってびしょ濡れになってしまいます。

すると建材が腐ったりカビが生えたりして、住宅の老朽化が進んでしまうのです。気密性が高ければ、室内の湿気が壁の中へ流れていってしまう心配もありません。

効率のよい換気で嫌な臭いの発生を防ぐ

室内には水蒸気や二酸化炭素、匂い成分などさまざまな物質が漂っています。

これらを定期的に屋外へ排出するために換気が必要になるのですが、住宅の中に気密性の高い場所や低い場所が混在していると、換気を効率よく行えません。

すると室内の物質が溜まってしまい、嫌な臭いを発生する場合があるのです。住宅の気密性を均一に高くすると、このような換気のバラつきを防いで嫌な臭いの発生を防げます。

気密性の高い家に住むメリット

CASE434 HIDAMARI

住宅を高気密化すると、さまざまなメリットが得られます。たとえば、高気密だと室内に空気が留まるため暖まりやすく、少しの暖房でも十分に室内温度を上げられます。暖房をフルに動かす必要がないため、電気代や燃料費などを安く済ませられます。

また、廊下や洗面所、風呂場、トイレなど、室内以外にも隙間風が入りにくいため、暖かい室内との温度差も大きくなりません。暖かい場所から急激に寒い場所へ移動したときに起こる「ヒートショック」のリスクも軽減できるのです。

ヒートショックとは、血管が寒さで収縮して血圧が一気に上がり、意識を失ったり心筋梗塞などを引き起こしたりする症状のことで、高齢者や生活習慣病などの持病を持つ人は発症しやすいため、家族に該当者がいる場合は住宅の気密性を高めておくと安心です。

さらに、遮音性が高いというのも嬉しいポイントです。交通量の多い場所や学校の近くなどは、閑静な住宅地と比べるとどうしても騒音が気になることもあります。せっかくのマイホームで騒音に悩まされる毎日など、考えたくありませんよね。気密性を高くしておくと外部の音もある程度シャットアウトできるため、気密性が低い住宅よりも静かな環境を実現できるでしょう。

気密性の高い家はデメリットもある?

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住宅の気密化には、数多くの必要性やメリットがあります。その一方で、実はデメリットもあるため注意しなくてはなりません。

気密化された住宅では、エアコンの効きはよくなっています。しかし、エアコンをつけずにいると、窓から入る陽の光によって室温が上昇しがちです。そのうえ、空気がこもると室内がますます熱くなります。これを防ぐためには、遮光カーテンやブラインドを活用して入ってくる日の光を減らすとよいでしょう。

また、温度と同じく湿気もこもりやすいため、冬は結露が発生しやすくなります。24時間換気をしていても発生するケースがあり、放置しているとカビや腐食の原因になるためこまめな拭き取りが必要です。

さらに、空気の自然な入れ替えがあまり起きないため、シックハウス症候群の原因になる恐れもあります。建材から揮発した物質やハウスダストが長時間室内を漂うため、頭痛やめまい、吐き気などを発症する可能性があるのです。ただし、有害物質を揮発しにくい建材を使ったり、24時間換気を徹底したりすればシックハウス症候群のリスクは大幅に引き下げられます。

気密性の高い家を建てるときのポイント

気密性の高い家を建てるときのポイントとは

気密性の高さは、家を快適に過ごせ、かつ、長持ちするものにするためにも重要です。しかし、密閉されているので熱や空気もこもりがちになります。この点を踏まえ、気密性の高い家を建てるときのポイントを解説します。

断熱性の高さもセットで考える

気密性の高い家を建てる場合は、断熱性の高さもセットで考えましょう。断熱性が高ければ、室内の温度が外に逃げないので、冬は暖かく、夏は涼しくなります。

しかし、性能のよい断熱材を使うなどして断熱性を上げたとしても、家自体に隙間が多かったなら意味がありません。空気の流出入が頻繁に起きるため、室内の温度も外に逃げてしまいます。隙間になる部分にはテープを貼ったり、断熱材として吹き付け材を選んだりなどの工夫が必要です。

外に空気を逃さない高気密と高断熱はセットで取り入れましょう。なお、断熱材の役割や選び方など、断熱性の高い家を作るためのポイントは以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。

関連記事:機能性を徹底的に比較!断熱材は何にすべき?

換気方式を確認する

シックハウス症候群を防ぐためにも、気密性の高い家は効率的に換気を行い、空気を循環させることが重要です。建築基準法では、24時間換気システムの設置が2003年から義務付けられています。そのため、気密性の高い家を建てる際は、24時間換気システムの換気方式も忘れずに確認しましょう。なお、換気方式には、以下の3つがあります。

・第一種換気:吸気と排気を機械で換気するもの
・第二種換気:機械で吸気し自然に排気するもの
・第三種換気:自然に吸気し機械で排気するもの

このうち、住宅で一般的に使われるのは第一種換気と第三種換気です。高気密の住宅の場合は、空気の流れやすさの観点から第一種換気を選びましょう。

気密性の高い家に設置するエアコンの選び方

気密性の高い家にエアコンを設置する場合、必ずしも各部屋にエアコンを設置する必要はありません。以下の条件を満たす家であれば、設置するエアコンが1台であっても、効率的に室内の温度管理ができます。

・空間が壁などで仕切られていない
・家全体に送風できる設備がある

また、床下エアコンを使って足元から風を送り、家全体に行き渡らせる方法もあります。

ただし、パソコンなど熱を発するものがある部屋や、日射量が多くて狭い部屋の場合は、個別にエアコンを設置するのが望ましいでしょう。加えて、人が集まる部屋も細かい温度調整ができるよう、個別にエアコンを設置したほうがよさそうです。

気密性の高さは快適性を上げる!

CASE440 光窓の家

住宅の隙間をできる限り減らして気密性を高めれば、さまざまな恩恵を受けられます。高性能の換気システムによって室内の快適できれいな空気を効率的に維持し、健康的な室内環境を作り出せるのです。
主に省エネや快適性といった面でメリットが大きいので、この点を重視する人にとっては最適な住宅だといえるでしょう。

ただし、高気密住宅はハウスメーカーによって得意なデザインが異なるという特徴もあります。気密性をとにかく重視して窓や開口部を小さく設計するところもあれば、逆に窓などの解放感と気密性をバランスよく取り入れる設計を得意とするところもあります。好みのデザインを実現できる会社をじっくり探し、満足できるマイホームづくりを目指しましょう。

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気密性の高い家に関するよくある質問

気密性の高い家を建てるにあたってよくある質問を紹介します。ここで紹介するもの以外にも、何らかの疑問があれば早い段階で解決しておきましょう。わからないまま進めるのは禁物です。

夏になると気密性の高い家は暑い?

気密性の高い家には、空気を逃さないという性質があります。このため、部屋にこもった熱が外に出にくく、暑いと感じることもあるかもしれません。

しかし、室内が冷房で冷やされているならその空気を閉じ込めることになります。つまり、冷たい空気が外に出ていかないため、冷房も効きやすくなるでしょう。暑くなりがちな部屋には別にエアコンを置くなどの配慮をすれば、十分夏でも快適に過ごせます。

また、暑さを防ぐために重要なのは日射遮蔽(日光をさえぎること)です。外付けブラインドや外付けシェード、遮光カーテンやブラインドを取付、必要以上に日光が入ってこないようにしましょう。すだれをかけたり、植物を植えたりするのも効果的です。

気密性の高い家でもゴキブリは出る?

結論からいうと、気密性の高い家でもゴキブリが出る可能性はあります。高気密の家は隙間がないので、虫が侵入しないと考えている人も多いでしょう。

たしかに、高気密の家は空調管理や24時間換気などによってジメジメしにくく、ゴキブリが寄り付きにくい環境になっています。ただし、窓やドアの開閉時に侵入してきたり、排気口からいつの間にか入ってきたりしていることも往々にしてあり得ます。加えて、洗濯物を取り込んだり、外に出しておいた植木鉢などを室内にしまったりする際に一緒に入ってくる可能性もゼロではありません。

気密性が高いからと過信し過ぎず、虫よけスプレーや虫よけフィルターなども使って対策を講じましょう。

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