構造計算の費用の目安は?木造住宅やプレハブ住宅のケースを解説

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注文住宅について調べると、構造計算という馴染みのない言葉を見聞きすることがあります。せっかく注文住宅を建てるのなら、そのような専門用語にも理解を深めておきたいですよね。

構造計算とは、建物にかかる力とその安全性を計算することをいいます。建築物には固定荷重、積載荷重、積雪荷重、風荷重、地震荷重などのさまざまな力がかかります。そのため、その建築物が安全な状態を保てるかどうかを設計段階でしっかりと検討しておく必要があるのです。

そこで、今回は構造計算の内容と費用について解説します。

なぜ必要?構造計算を行う目的

CASE377 POP UP HOUSE

構造計算は住宅や施設を建てるにあたって、耐震性や強度といった建物の構造安全性を確認するために行うものです。柱・梁・壁・床といった構造部材を対象に、量・配置・強度などを調査して、どのくらいの振動や衝撃に耐えられるのかを調べます。

地震や台風といった災害はもちろん、家具や積雪による荷重にも負けない頑丈な建物を建てることが目的です。構造計算を実施しているかどうかで、建物の性能は変化します。入居者の安全にも大きく影響するのです。

構造計算とは?家の強度を測る3つの方法

家の強度を測る方法は、構造計算も含めて以下の3つがあります。

  • 壁量計算
  • 性能表示計算
  • 構造計算

構造計算への理解を深めるためには、他の方法を知っておくことも大切です。それぞれ概要をまとめたので、ぜひご確認ください。

壁量計算

壁量計算とは、壁の量に基づいて地震や台風による横の力(水平力)の影響で建物が倒壊しないかを検証する方法です。建築基準法で定められている最も一般的な計算方法ということもあり、多くの会社が取り入れています。構造計算に比べると簡易なので、計算結果の資料はA3用紙1枚程度です。

なお、木造2階建て以下かつ500㎡以下の建物については、この壁量計算だけで良いことが法律で規定されています。

性能表示計算

性能表示計算とは、壁量計算とともに床・屋根の強さ、床の強さに応じた横架材接合部の強さなども検証する方法です。耐震等級2以上を確保したうえで、長期優良住宅や性能評価住宅の認定を受けるために必要な計算方法なので、こちらも多くの会社が取り入れています。

なお、性能表示計算では簡易検査が認められており、梁の断面寸法をまとめた早見表「スパン表」などを使って、計算を省略できます。

構造計算

構造計算とは、建物に常時かかる固定荷重(構造物の自重)や積載荷重などによる「長期荷重」と、積雪荷重や風荷重といった短時間だけかかる「短期荷重」を想定し、部材内部にて発生する応力(抵抗力)を計算する方法です。

また、建物で使っている構造部材の許容応力度(損傷を受けない最大の力)を検証する構造計算は「許容応力度計算」と呼ばれています。時間・費用がかかるものの、建物の安全性を確認するうえで最も信頼のおける計算方法です。

建築基準法で定められた構造計算については耐震基準の改正はいつ? 木造住宅・マンションの改正前との違いは?の記事でご確認ください。

構造計算書の提出がいらない建物の種類とは

構造計算書は、必ずしもすべての建物に必要なものではありません。建物の種類によっては構造計算書が不要なケースが多く、一般的な住宅にいたっては必要なケースのほうが少ないでしょう。

まず、木造2階建て以下の住宅に代表される通称「4号建築」は、構造計算書の提出は必要ありません。多くの住宅が木造2階建て以下であるためです。ほとんどの場合、許容応力度計算、軸組計算、壁量計算、偏芯率計算などの簡易的な方法で計算されます。

また、多くのプレハブ住宅も構造計算書が不要です。プレハブ住宅は、大手ハウスメーカーが国土交通大臣からの認定を一括して受けています。この大臣認定の範囲内で設計を行い、品質管理された工場で部材を生産することで、一棟一棟の構造計算を省略することが認められているのです。

プレハブと聞くと、簡易的な住宅をイメージする人もいるかもしれませんが、ここでのプレハブ住宅とは、企画の要素が強い住宅のことです。大手ハウスメーカーが住宅に商品名をつけ、施工主が希望する土地にカタログ通りの住宅を建てます。

注文住宅と違い、施工主が誰であるかに関わらず、認定を受けた規格そのままの住宅が建てられることです。そのため、改めて計算する必要がなく、その分コストも抑えられる傾向にあります。

「自分が建てようとしている家はプレハブではない」と思っていても、建築の観点から見るとプレハブ住宅に該当することも多いのです。「プレハブだから構造計算書を提出する必要はない」と説明される場合は、既に認定を受けているので安心して大丈夫でしょう。

木造2階建ての住宅やプレハブ住宅を建てる場合は、構造計算についての説明が簡略化されることもあるかもしれません。しっかりと説明してくれないという不安を覚えるのであれば、自ら説明を求めることも大切です。

構造計算を提案されなかった場合、基本的には「自分たちが建てようとしている住宅には構造計算書は必要ない」という認識で問題ないでしょう。

構造計算書の必要な建物とその費用

一般的な住宅であっても、構造計算書が必要なケースもあります。木造3階建てや、鉄骨造、鉄筋コンクリート造の住宅では、構造計算書が必要です。これらの建物は、構造計算適合性判定を受ける必要があり、確認申請の際に構造計算書の提出が求められます。

構造計算書の作成にあたっては、許容応力度等計算、保有水平耐力計算、限界耐力計算、時刻歴応答解析などの精密な構造計算が必要です。

しかし、構造計算は、構造設計一級建築士の有資格者のみ行うことができ、その数は多くはありません。住宅をメインにしている設計事務所や工務店などが、社内に構造設計一級建築士を置くことは珍しいのです。

そのため、構造計算書が必要な場合には構造設計を専門に行う外部の構造設計事務所に委託するのが一般的になっています。

構造計算書はA4用紙で100枚以上になることもあり、構造計算を行う設計事務所にとっても、建築確認審査機関にとっても膨大な作業量になります。構造計算の費用が高いといわれるのは、このような実情があるためです。

構造計算の費用は建物の規模や構造にもよりますが、30坪前後の一般的な住宅で30万~50万円が相場であり、新築時の負担が増えることは否めないでしょう。しかし、構造計算書は法的に必要であることはもちろんですが、それ以上に住宅の安全を確保するために必要な作業だと理解しましょう。

構造計算書は不要だが構造計算が必要なケース

CASE427 CASA VINO

住宅の構造計算は、法的な観点のみで必要性を判断してよいというわけではありません。さまざまな建築様式やデザインの住宅が増えてきている中、柔軟な判断が必要になることもあります。

法的には構造計算書の提出が義務付けられていない場合でも、精密な構造計算を行ったほうがよいとされるケースもあることを忘れてはいけません。

窓などを多用した大きな開口部が多い住宅や、壁が少なく大きな空間がある場合は、たとえ木造2階建てであっても構造計算を行ったほうが安心です。このタイプの住宅は、従来の木造2階建ての住宅とは異なる性質があるからです。

たとえば、リビングからテラスまでの空間を掃き出し窓で仕切っている場合や、総ガラス張りの空間がある場合は注意が必要です。開放的なデザイン性と安全性が引き換えにならないよう、構造計算の必要性を確認したほうがよいでしょう。

モダンな住宅では、壁の量を減らしてリビングやダイニング、和室などを1つの空間に収めているケースも多くみられるようになりました。壁の量は建物の強度に大きく影響するため、構造計算を検討したほうがよい場合もあります。数値化することで、より確実な安全性を確保できます。

また、都市部や住宅街などでは、変形地や狭小地への建築を検討することも少なくありません。そのような場所に住宅を建てる場合、住宅そのものが複雑な外形や形状となることもあります。ハウスメーカーが提案する狭小地専用のプレハブ住宅などでない限り、構造計算が必要になることを心に留めておきましょう。

スキップフロアなどの複雑な空間も構造計算が必要になることもあります。スキップフロアは3階建てにすることを避けるために選択されることもあります。しかし、小さな階段が数多く存在するスキップフロアはどうしても構造自体が複雑化するため、構造を数値化しておいたほうがいいケースもあるのです。

これらのケースでは法による明確な定めがないこともあり、一概に精密な構造計算が必要かそうでないかを判定することはできません。依頼先の設計士から説明を受けた上で、構造計算の必要性について十分に理解しておくことが重要です。

構造計算でマイホームの安全を数値化しよう

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構造計算を行う目的は、家を建てるための資料をそろえることではありません。マイホームが地震や強風に耐えられるかを確認することにあります。

それが結果として、災害などからマイホームを守ることにもなるのです。確かに費用や手間、時間もかかるでしょう。しかし、構造計算でマイホームの安全を数値化しておくことは、安心感につながります。

「この家は本当に大丈夫だろうか」という不安やストレスを軽減するという意味では、施工主にとっても大きなメリットになるでしょう。このように、構造計算は単なる書類としての利用以外にも、さまざまな役目を果たしてくれます。必要な場合は構造計算を行い、安心、安全のマイホームを建てましょう。

フリーダムアーキテクツでは、構造計算に基づいた地震に強い家づくりが可能です。耐震性能はもちろん、台風や積雪への耐性も高いので、1年中いつでも安心して暮らせるようになります。

また、土地探しも含めてワンストップでサポートしていること、独自の発注ルートによって低価格化を実現していることなどもポイントです。

また、土地探しも含めてワンストップでサポートしていること、独自の発注ルートによって低価格化を実現していることなどもポイントです。家づくりを検討中なら、ぜひ一度お問い合わせください。

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